2013年10月24日
道草 8
いくつかの台風がこの秋は日本を襲った
そしてまた大きな台風がフィリピン沖で発生したと昼を食べた食堂のテレビが言っていた
すでに季節は周り そしてこの季節も次の幕へとかわりつつあった
社内は
相変わらず毎日の経済ニュースに一喜一憂し
会社への愚痴は毎日だ
でも自分には関係ない
ないわけがない 物が売れなきゃお払い箱だ
また営業に戻るか
無理だ わかっている
ずっと 自分をだましながらやってきた
責任がとても嫌だった
あげた実績は喜びのエネルギーにはならなかった
あるのは安堵
月のほとんどは不安と焦燥
どうやって仕事してたんだろう
自分を褒められるのはそこだろう
人は時間とともにその時間にも溶け込んでいく
環境は何だっていい
時間があればなんとかなるものだ
毎日の暮らし方も同じ筋肉をつかっていかに疲れないようにするかを
学習する
一時間電車に揺られるのは何とも感じなくなる
それと同時に恐ろしいことに時間の使い方もひどくなるのだ
何がひどいって 何もしようとしなくなる
頭の中に出てくるのは数年数十年前のことばかり
あるいは痛い思いをしていまだにドキドキしてしまうような映像
結局 今のためにつかうのは
燃費を考えた毎日の過ごし方だ
それにともない 徐々に町の景色も見えなくなっていた
本屋にもそうそう寄らない
通る道は同じだが 昨日まであった店がなくなっていても
気づくのは何日も経ってからという始末だ
あの店もそうだった
あれ以来 不思議と思い出すことはなかった
先日 同期から 同期の集まりを新年にやろうと
電話がかかってきても あいつとともに思い出すことはなかった
どうなったかなんて知らない
先輩はまだ行っているのだろうか
そして あいつは まだ何かを探しているのか
よく考えてみると おかしな体験だ
それが自然に忘れられるなんて 未知の力が働いているんだろうか
たまに一瞬 浮かんでは消えるの繰り返し
もしかして 沸騰している鍋のふたがカタカタとしている感覚か
蓋をしているのは何?誰?
自分で無意識に?
相変わらずどんよりとした空はいつ雨を降らそうかとぐんぐん低く迫ってくる
国道を走る車の音がいつもより大きく聞こえてくる
奥歯の噛み合わせがおかしい
こんな時は あまりいいこと期待しない方がいいな
腕時計を見ようと手首をぶるぶるとふるわせ左腕を胸の前にもってきた
「時間だ」
そのままオフィスに戻って仕事についた
そしてまた 鍋の火を消したように蓋は動かなくなった
日が暮れるまでまた
つまらないけど安心できる
今の仕事だ
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