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2014年12月14日

僕の時間 11

僕の時間 11



砂浜から大きく海へ突き出したピアの上では
釣り糸を垂れる人たちが週末ごとに増えてきた
海岸沿いを貫く国道をサーフボードを抱えた若者が
裸足のまま
猛スピードのクルマを縫って海へと走り渡る

鮮やかなイエローのSUZUKIが道路わきに停まっている
ビーチガードのレンジャーがサングラスをかけたまま
双眼鏡をのぞきこんでいる

このビーチではずっと昔から飲食が慎まれている
アルコールはもちろんだ
そういう場合は砂浜から上がったこの国道までやってくる
あまり安全だとは言えないこの街でも
子供の集まるところはとにかく厳しい
時代が変わっても 大切なものを守ることは
誰にでもある純粋な感情だろう

だからゆったりと静かな週末を過ごしたい人たちが
思い思いにやってくるのだ

色とりどりの花が咲き
国道から少し入った通りはさまざまなショップが
すでに夏のような雰囲気でデコレートされている

ゆっくりと進む時間を
コーヒーとともに楽しむ
何もせずともこうやって
楽しんでいる人をみることが楽しいのだ

遠くから波の音が時折風に乗って聞こえてくる
低く唸る声にも似ているが
知らない間にその波長に深く身をゆだねている自分に気づく

ぼんやりと昨夜のことを考えていた
あの時
僕は自分に想像もできないようなことでも
何も躊躇することなく受け入れることができる能力と寛容が
あることを知った

またそれが僕のドアを開けた
一瞬の動揺ののち
僕は静かに中に招き入れたのだった

それは
一本の電話だった

それは彼の息子という男性からだった

初めて話したが
彼と同じ声だったからすぐにわかった

彼の息子は僕のことを探していたらしい

この街の事や友達のことは多少話で聞いていたらしいが

「うちの父がお世話になったようで、、、」
「いや 仲良しだっただけさ お互い何もしちゃいないよ」

「実は先日 家を整理していたら
父の遺品の中から一枚のカードがでてきたんです」

「えっ?今なんて言った?」

「あ すいません あのご存じではないんですね?」
僕はその電話の意味を知りたくない気持ちで
一気に心が満たされた
だが彼の息子は話を続けた

「私の小さいころ父は亡くなったんですが その頃のことだから
きっと父の友人の方は知っているかと思いました
失礼をいたしました」

何を馬鹿なことを言ってるんだ
僕は彼の息子であることを疑いたくなった
同時に胸の奥の方が一気に締め付けられた

「あの どういうことですか?」
僕はもう一度 彼の息子に聞いた

「父の遺品の中からでてきたカードがとても不思議だったんです
そしてその裏にはあなたの名前が書いてあった
私は父の住んでいた街の友人に違いないと思い探しました
そして今電話しているんです」
「ああ わかった で 何て?」
僕はまったく聞く気もないことを聞いていた
そもそも彼がもういないなんて 

「表には あなたはこの花を受け取る価値があります と
書いてあります そして裏には父の字であなたの名前と
メッセージが、、、」
僕は彼の息子がそこで話を止めたことに
彼と同じ優しさを感じた 
こんな場面では彼もきっとそうしただろう

「でメッセージにはなんと?」
僕はすでにすべてを受け入れる準備ができていた
というより そのあと僕に湧き上がる感情を予測することが
とても困難だったという方が正しいだろう

「僕を救ってくれた 人生の経験は一度きり
永遠に感謝する」
しばらく沈黙のあと再び彼の息子は静かに続きを読んだ

「僕の時間を捧げる いつか真実を知るために」

聞いているうちに僕は目の前がひどく歪んできた
言葉では説明できない感覚が
目の奥の痛みがとても深くなる

「ありがとう」
僕はそういうのが精いっぱいだった
連絡先を聞いて
僕は彼の息子に会いに行く約束だけはした

ただ何も整理のついていない部屋の中で
僕の時間をもう一度考えなくてはいけないと思い始めていた





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この記事へのコメント
昨夜はLIVEありがとです。私もこんな文体が書けたらもっと良い曲になるんですが。。。精進します。色々とご教授くださいね。
Posted by マグマグ at 2014年12月15日 16:32
マグさん
沁みる時間をありがとうございました。
Posted by びらーだびらーだ at 2014年12月21日 11:13
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