2014年12月21日
僕の時間 wayout

夜もまだ明けない頃
ボーリング場の駐車場にワゴンやトラックが一台二台と集まってくる
夏も終わりに近い
朝は乾燥した昼間とは違い
微かにただよう湿気に
身震いする
何人いたのだろう
でかいダッジの荷台に
ビールやワイン
肉の塊 チップスやフルーツを積み込み
ワゴンにはオフロードバイクが積まれている
そして何の合図もなく
それぞれのクルマに乗って
真っ暗闇の中へ入っていく
街を抜けゆるやかな上り坂が何十分も続く
町はずれにあるペプシのネオンサインを通りすぎると
もうそこから先はほとんど家もない
目の前を黒い動物が横切る
2時間くらい走っただろうか
後ろについてきた奴が反対車線に出て
僕らのクルマの横に並んだ
「少し休もうぜ」
彼らのクルマは僕らを追い越して走り始めた
しばらく行くとガススタンドのネオンが小さく光っている
彼らはウインカーをだしそこへ滑り込んでいった
僕らも後に続く
僕のクルマはまだガスは十分にあったが
とりあえずみんなフルタンクにした
すぐ隣のパーキングに車を停め
それぞれに煙草を吸ったり
はしゃぎ合ったり
店に走ってチョコレートバーやコーヒーを買いに行ったり
漆黒に塗られていた
東の空は濃いブルーが徐々に薄められ
かすかな大地の輪郭がはっきりしてくる
そうなると
冷たい光を放っていた
無数の星は少しずつ消灯だ
ワット数の大きな奴だけ最後まで灯っている
まだ目的地には少しあるが
慌てる必要もない
「じゃあいこうか」
無秩序な集団は
その声を聞いてまた各々車に戻るのだった
やがて空は赤く燃えてくる
そして光が僕らの目に
突き刺さる
陽も高くなった頃
少しの眠気と共に
目的地に到着した
広大な森の中
きれいな川が流れる美しいところだ
ある奴は積んできたバイクを降ろす
勿論パーティーの準備も進んでいる
それとは別にいくつかのプラスティックや鉄製のケースを
降ろす
その中には銃や弾丸が入っている
シューティングも僕らの間ではスポーツなのだ
生き物は絶対撃たない
空っぽになった缶や
要らなくなったバケツ
それを標的にして遊ぶのだ
それが日常だ
でも
銃を持ってこの国はどこへでも出かけていく
そしてそのスコープには
空き缶やバケツは映らない
力のみが正義
この国のアイデンティティーは
引き算で答えが出ると思ってる
誰もわかっていても口には出さない
虚無感の理解だ
明るく楽しく撃ちたい奴だけが遊ぶ
バイクで走り回っているやつは森の奥へ消えていく
ビールを片手に腰かけて話しているやつだっている
肉を焼く煙が時に目にしみる
久しぶりの楽しい休日だ
こうして季節は回っていく
いつまでも続くとは思っていない
いつかはどこかへ皆行ってしまう
さよならなんて言うのは簡単だ
それでも僕らは同じ時間を
生きようとする
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