2014年12月16日
僕の時間 13
あまり整備されているとは言い難い道をゆっくりと走っていく
時折反対車線からやってくる大きなピックアップ
自然に運転席に目がいく
知らず知らず彼を探している
当然だけど
誰一人僕の視線を気にすることなく
一瞬にすれ違っていく
街を外れ車からの景色は
きれいに整えられたかのように並ぶ
針葉樹の森
所々が開けていて いくつかの家が
ダイスを転がしたように思い思いの向きで建っている
そんな道をしばらく走った
忘れたころに現れたシグナルを越え
少し行くと木々の間から
大きなパーキングが見えた
たくさんの墓が並んでいた
とても短い時間で淡々と過ごしているように感じる
僕の頭の中は過去と今を行ったり来たりしている
彼の息子も同じように僕への義務を果たそうとしているのか
迷うことなく
彼の眠っている墓に歩いて行った
僕もその後ろをついていく
「こちらです」
軽く手を差し出したその先に
彼の名前を刻んだ墓があった
黙ったままその前に立った
墓碑銘には彼の人生の長さが刻されている
やりきれない現実が目に入り
再び僕の頭の中を満たす
こちらへ来てまもなくと思われる年号に
疑いの思いもなく
静かに目を閉じた
誰に言われることもなく
僕はすべてを受け入れた
「ありがとう、、、」
僕は彼に言った
その次の言葉は僕なりに選んだつもりだったが
適切だったのかはわからない
ただもう充分だと
不思議な満足感が湧き出してきた
「すまないがどこかで休憩できないか
少し疲れたようだよ」
彼はうなずいて 歩き出した
実際 遠い道のりをひと息にやってきた
すべてを明らかにすることが僕のエネルギーだった
しかし もうどうでもよかった
細い国道の脇にあるドライブインに入った
ガススタンドと小さなドラッグストアに連なって
カフェがある
オープンの看板が窓に立てかけてある
外のサインは陽の光に長年痛めつけられ
すっかり勢いをなくしたレッドが僕たちを見下ろしている
テーブルでコーヒーを注文した
彼はそれを待っていたかのように胸のポケットから一枚のカードを出した
それは あのカードだった
「これを、、、」
僕に差し出されたカードをそのまま受け取りその状態のまま
自分の顔を近づけていった
あえてエアポートで見ることもなかった
彼もそのタイミングを探していたかのようだ
そこには彼が言っていたメッセージが書かれていた
長い時間を経て薄くなったインク
でもしっかりとした字はすぐに読み取れるものだった
そして
ゆっくりとカードを裏返した
彼の字だ
電話で聞いた言葉 そのままだ
そして僕の名前が書いてある
何度も読み返す
何度も何度も思い出してきた過去がまた現れる
僕の中はあの頃に戻り そこからまた時計が動き出したような気持ちになった
「あの もうひとついいですか?」
彼は一枚の写真を僕の目の前に静かに置いた
カードを持ったまま テーブルの写真を見た僕は
声を上げ
動けなくなってしまった
写真を見つめ続ける
ほんのしばらくの後
あのイブの夜の彼のように
僕は自分の体が震えているのに気がついた
今まで僕の中に満ちていたものがすべてこの世界へでてきたようだ
店には何人かお客がいたが気づかれないように
静かに手で顔を覆った
思考の時間に伴って震える僕の体には
大きな波が押し寄せる
しばらくは息もできず苦しいほどに
胸の中から痛みがせりあがってきた
その写真は彼があの日僕に見せてくれたものだったのだ
そう引っ越していく前の彼の家の写真
ただ僕は見ただけではこんなにならなかったろう
その写真に写っている
彼の家の前で立っているのは
静かに笑いこちらを向いて立っている
彼
そして
僕
だったのだ
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