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2014年12月07日

僕の時間 7

僕の時間 7




クリスマスも近づいて
いろんな買い物をして
家に飾りつけを始めた週末

通りを走る車も人の装いも
日ごとに下がる気温に
少しぎこちなくなってきている

ただその電話をとるまでは
僕は静かにクリスマスを過ごす予定だった


そう 電話なんてものは
忘れた頃をずいぶん過ぎてからかかってくる

「やあどうだい?」
「ああ 元気さ」

大した会話でもないのだが
お互いの近況を話し また会おうで
電話をきるのだが 一度も実現していない

お互いその気がないのではないが
ふっと現実に戻り 今しなければいけない事を
毎日毎日していると
こんな風になってしまうのだ

今年の冬はいつになく寒そうだ
あれから何回クリスマスを過ごしただろう

僕の子供たちは 若かったころの僕と同じことをし
同じことで喜び同じ失敗をし
同じように自分たちで生きていくよう家を出ていった
当たり前の光景だが これも
僕の人生でのたった一度きりの経験

一度きりだから経験とは言わないのか
なんて この年になって考えるようにもなってきたが
経験ということにすれば 切れていた今と過去が繋がるから
寂しくないな と僕は片目を閉じて自分を納得させるのだ


彼からの電話は突然だった

「やあ久しぶり」という僕の声より先に
「俺の家 最近見たか?」 
いつもの調子ではなく 少し興奮ぎみに言ってきた

「家?」
「ああ 俺がいた家だ」

「いや 特にあれから行ってないよ
ああでも あのあたりは今も変わってないんじゃないか」

「そりゃいいんだけど お前の目で一度見に行ってきてくれないか」

年寄の注文はとても強引だ
いや失礼 彼は昔からそうだった

突然うちの前に来て僕のピックアップがあると
クラクションを鳴らす
僕が出ていくと
クルマの窓をあけて用件をすごい勢いで話し
「じゃあ」と言ってそのまま走り去る

彼は電話なんかよりそうやって顔を見て話す方が
いいらしい

そんな彼も変わってないなと
僕は少し楽しい気持ちになった
 


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