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2014年12月05日

僕の時間 5

僕の時間 5



遠くの山に雪がかかっているのが見える
もうすぐあたりも雪にうもれて
モノクロームの世界に変わっていくだろう

少し内陸の街に彼はいる
そう
あの不思議な出来事から
一年ほどして
彼は結婚し そして新しい仕事のために
引っ越していった

そうだ
あれから引っ越すまでの話をまとめなくちゃいけない
何度となく彼や仲間で遊んでたりして
あの話も何度かしたんだけど

鉢植えはそのままではかわいそうだから
家の前に植えたこと
そうすれば芝と一緒に水をあげればいいから
枯らさずにすむこと

何かの木だったらしいのだが
名前は調べることもなく
一度近所の人から聞いたけど
忘れてしまったこと

そして
その後は何も起きなかったこと
もちろん鉢植はそれ以上増えることはなかったこと

彼はそのままで遠い町へ行った

僕はあれから二度ほど住む場所がかわったけど
この街に住んでいる
二度目に変わった時は僕も結婚した時だ
仕事をかえることなく同じことをずっとやっている

友達も去ったり新しくできたりしたけど
そのスピードは年とともに
少しずつスローダウンしていったんだ
感情の振幅なのだろうか あるいは時計の振り子のように
同じ時間を刻むのに 大きな振り子はゆっくりと見える

きっと変わったところなんて何もなく
僕の中でどこかが痛んだり錆びたりしていったんだろう

その昔は

変な匂いの煙の漂う部屋で
PINK FLOYDをおっきな音で聞きながら
みんなでパーティをしたことや

週末に3時間ほど走って砂漠の真ん中で
BBQしながらシューティングしたり
草レースや大きなドラッグレースに出かけたり
スタジアムでベースボールやフットボールを観たり

この街のチームはあまり強くなかったけど
盛り上がるんだ

いろんな事をいろんな奴らとやってきて
その頃
今は何のために生きているかっていうのも

時とともに
何のためにそんなことを考えるのかって風に
なってきて

外見は少ししわが増えて
あちこちが疲れると痛くなって
ソファでテレビ見ていても
お目当てのプログラムの前に寝てしまったり

僕だけじゃなくみんな
ひとつひとつ年をとっていく間に
一生に一度しかない経験をしていることになっているのだ

そう経験は一度だけ
この瞬間はそこに置き去りにされて
シんでも戻ってこない

シでさえ一度きりだ

同じことは何度もあるけど
やっぱり一度きり
仕事だってそうだ
昨日の自分ではなく今の自分がやってること

ギターだって毎日同じことやっていても
少しずつ弾けるようになっていくから
その場所は一回しか通らないんだよ

彼もそんなふうに生きているのだろうか
彼の幸せを願うし

僕もいつでも彼に会えるようにしていなきゃいけない

結局 海沿いの国道を
走っただけで何もなかったように家に帰った
「おかえり きょうはどうだった?」
妻は言った

「ああ 順調さ」
僕は笑顔を作った
いつものように

時々 ほんとに時々だが
笑顔をまるでペンやドライバーのように使っていることに気づいた
道具として自分を守る

虚像を僕のスクリーンに映すことは それほど難しいことではない

僕の感情が他の誰かに見破られる前に
僕はためらうことなく そうしてしまうことを
向き合うことの手段にしていた









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