2014年08月29日
柵
電車を降り改札を出て天井の低い駅舎をくぐる
窓はあるものの十分に光は入らず待合は
季節に似つかわずコンクリートの床の冷たさが漂っている
ゆっくりと外に出ると階段がある
まっすぐに降りていく先には小さな駅前通りがある
風はゆるりと駅前の小さな広場をまわっている
光は駅舎から出たばかりの目に眩しい
ここに降りるのはとても久しぶりだ
切符を買う時から少し迷いもあった
半日近くをかけてやってくる価値を見つけるのに
時間もかかった
ただ意味のないように見えても
脈絡のない一日をどこかで刻みたかった
景観や情景を求めて来たのとは違った
ただ
ひとつかすかに残るものがあったのも確かだ
一年の内に一度か二度湧き上がってくるもの
思い出す能動とは色も味も違う
呼吸も浅く鼓動も早い
熱とともにいつも汗がにじむ
意識しないままに眠りにつき
目覚めた途端に現れる動悸
日々は時に思い出を壊しながら
粉々になった破片のひとつふたつを
カラダに残す
それが衝動となるのだろう
駅を背に少し進むと交差点がある
右に折れしばらく線路と平行して歩く
徐々に線路は離れていく
加速するように遠くに向かって伸びていく
線路に沿うように柵が続いている
歩く道との間には草に埋もれた空き地が広がり始める
線路の向こうには青い空がある
遠くの山々にたよりなく乗っている
歩いた道を引き返す
柵は少しずつ近くにくる
鼓動はゆっくりになり
汗は知らない間にひいている
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