2014年07月07日
after 2

太陽の光は金色だった
初めて感じる 光線の強さ
僕は地中海にほど近い それほど大きくない街の
エアターミナルを出た
ただでさえずっと乾燥していたから
ここであらためて吸い込む空気は
せき込むほどの清らかさだった
タクシーにのって ホテルへ向かう
今日から1週間
僕はこの街にいる
見るべき名所など調べてもいない
食べ物だって 日本と変わらないだろう
そんなことはどうでもよかった
結構なスピードで走るタクシーの窓から見える街は
数百年の時が止まったままではないかというくらいに
黄金色の太陽に照らされて
静かに荘厳な姿をとどめていた
ヨーロッパには何度か来たことはある
いつもは宿に着くと すぐにワインだ
つまみにプレーンクラッカーをかじって
すこし我が身をねぎらうのが習慣になっていたのだが
今回は荷物を置いて すぐにロビーに戻った
それほどランクの高いホテルではないのだが
石の柱がにょきりとまた整然と立っている
ソファには静かに新聞を読む老紳士
窓の外の通りを静かに眺めている 婦人
チェックインカウンターで身振り手振りで何かを話している小太りの男
奥のソファには 中東の伝統衣装をまとった3人組
この国全体が観光地だから こういうものなんだろう
やたらと大きい声で話しながら歩くアジア圏の人と思われる集団が
ドアを少し乱暴に開けて 通りへ出ていった
外にいっても窓越しにまだ声が聞こえてくる
その集団と入れ替わるように一人の男が入ってきた
スーツ姿のその男にあうことが このたびの最大の目的なのだ
彼は僕と目が合うと 軽くウィンクしてこちらへ歩いてきた
三か月前から少し柔らかくなったあごのライン
優しそうに微笑むその顔は
あの4年を過ごした彼と同一人物だと納得させるのに
数秒を要してしまった
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