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2014年03月08日

川

街には川が流れていました

少しだけかすむ向こう岸は隣の町

ゆっくりとした水の流れ

風が運ぶにおい

静かに降ってくる日差し

その子はいつも川のほとりにすわっていました

ある日

いつものようにその子が川辺にすわっていると

知らない人が歩いてきました

大きな体のその人は帽子をかぶっていました

「そこでなにをしているの?」

その人は尋ねてきました

「川の流れを見ているんです」

その子は答えました

「この川は悔しさの涙の集まり

戦いで死んでいった兵士たちの涙だよ」

その人は大きく手を振りながら川下へ歩いていきました

しばらくするとまた

知らない人が歩いてきました

汚れた服を着てやせていました

「そこでなにをしているの?」

その人は尋ねてきました

「川の流れを見ているんです」

その子は答えました

「この川は悲しみの涙の集まり

思いを砕かれた人たちの涙だよ」

その人は両手で頭を抱えながら川下へ歩いていきました

しばらくするとまた

知らない人が歩いてきました

目を吊り上げて怖い顔をしていました

「そこでなにをしているの?」

その人は尋ねてきました

「川の流れを見ているんです」

その子は答えました

「この川は怒りの涙の集まり

安息の地を追われた人たちの涙だよ」

その人は手を握りしめ川下へ歩いていきました

そしてまたしばらくすると

知らない人が歩いてきました

優しい顔で微笑んでいました

「そこでなにをしているの?」

その人は尋ねてきました

「川の流れを見ているんです」

その子は答えました

「この川は喜びの涙の集まり

新しい命を授かった親たちの涙だよ」

その人は手を広げ川下へ歩いていきました


その子は川の流れを見ていました

悔しさや悲しさや怒りや喜びの涙は

ひとつになって流れていきました

流れて流れて涙の集まりはやがて海につきました

海にでた涙の集まりは

世界中につながって混じり合っていきました

川





Posted by びらーだ at 14:59
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