2013年12月02日
moment

12月
いろいろな日がやってきます
そんな中でもクリスマスは世界中が祈る日
日本では 年末の忙しさや都市の終わる一抹の寂しさで
前の夜 イブの方が注目されがちです
その日はいろんな約束をし みんないろいろなところで
過ごすことでしょう
そんな中 相変わらず仕事がおわらず
知らない間に過ぎてしまったなんて人も・・・
ま 今月は25日までは それぞれに思いを馳せて
新しい瞬間を刻むことができればいいですね
その日も午後になると一気に陽は傾いてきた
3時過ぎれば今日はおしまいなんて気にもなってしまう
冬至は過ぎたのでこれから日は長くなるのだが
この寒さ クルマのラジオではこの冬一番などと言っている
しかし今日はクリスマスイブ
仕事で走る街中は少し忙しげに人が行き来している
商店も歩道までせり出したテーブルの上で今夜で用無しになってしまう
クリスマスものを売っている
通りすぎるクルマの窓から 一生懸命に呼び込む声が漏れてくる
特に今年も変わることなく彼は仕事を淡々とこなしていた
営業回りの彼は 取引先に医療品を届けるルートセールスだ
決まったところをこなすまでは終われない
なおかつ 行った先で急な要件をおおせつかったりして増々帰りは遅くなる
昨日今日始まったことではないので今ではあまり動揺しなくなったが
二十代のころは あからさまに嫌な顔をしてクライアントから
会社にお叱りがあったりもした
そんなことをしながら早20数年 早くないがすこし出世もし部下もできたのだが
やってることは変わらない
その役割ごとに時間というものは うまく潰されるもんだと
変に納得し 毎日を過ごしている
で今日だ
毎年 12月は12時近くまで会社にいることになる
ここ数年は顕著だ 会社が儲かっているからではない
部下ができてからは この日は若い奴らを先に帰すからだ
遅い時間に行く先は彼が代わりに行くようにしているのだ
なかなか行けない 長い付き合いの取引先に
年末に挨拶に行けるからと もっともな理由をつけ
こなしているのであった
最後の訪問先は午後8時
用事を済ませて事務所にもどれば10時は過ぎる
書類を片付けて 会社をでればそれこそ日付が変わる
それで彼のイブは夜中に 缶ビールとコンビニで買った唐揚げでおしまい
だから誰かと約束はできないし したこともない
次の日になれば 昨日まで輝いていたイルミネーションも途端によそよそしくなり
もう年末年始の準備へ向かっていく
だから 一晩だけ我慢すればなんてことはないのだ
やめようと何年も思い続けているタバコに火をつけた
クルマの中では吸えないので 街を外れたコンビニの駐車場で
寒空を眺めていた もうすでにあたりは暗い
ため息と一緒に煙を空に向かって吐き出した
冷たい風に乗って煙が流れていった
会社に戻ると案の定 所長がひとり
待ってましたとばかりに あとはよろしくとさっさと帰っていった
事務所の蛍光灯も一列だけ点いている
さて と 机に向かい書類を取り出した時だ
事務所の前の駐車場に赤い光がいくつか揺れている
何事か 何か起きたか
窓からは光しか見えないがしばらく目を凝らしていると人影も確認できた
ほんの数秒だ
誰か来たのか とドアを開け外を見渡そうとすると
帰ったはずの部下たちだ
「どうした?」
というのとほぼ同時に
「メリークリスマス!!」
なんなんだ
部下たちがそこにいる
手にはケーキであろう包みと
懐中電灯
お菓子の袋 コンビニのおでん
おいおい 何があったの?
「毎年 ありがとうございます。今年はちょっとお礼をと思いまして
おみやげ、うちで食べてください。」
「あ あ~ ありがとう」
「では すいませんが私たち行きます。」
「お~ 気をつけてな」
「はい」
部下たちとひとしきり話をし
みんなを見送った
「いいとこあるな」
ひとり 自然にあふれる笑顔をこらえながら
事務所にはいった
仕事だけの間柄だと割り切っていた自分も
多少は存在感があったのかなと すこし温かい気分にもなった
「さて」
残った仕事はまだある
家にもどれば日が変わるだろう
ラジオのスイッチをいれた
静かな事務所にクリスマスソングが流れた
なかなかいいクリスマスプレゼントだな
眠気もどこかへ消えていた
今夜は今年一番の寒さだったな
事務所の中はとても暖かかった
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。