2013年10月02日
10月2日の記事

両側を田んぼに挟まれた細い道
遠くでは稲刈りが始まり大きなトラクタの音が聞こえる
ゆっくりと歩いている
仕事を終えての帰り道
「いつもこの季節になると水深が深くなっちゃう気がするんだ」
「私は高度が高くなる気がするわ」
「上と下でだいぶ距離が離れてしまいそうだな」
「海の底はいつかはたどり着くものよ
空の上には空だから」
夕暮れ前の稲は傾いた日を受けて金色に揺れている
「その真中がここってことか」
「みんな同じってことね」
「ああ」
ほんとは違うことを言いたそうに
「20年前って覚えてる?」
「なんとなく おおきなことやささいだけど引っかかってることとかはね」
「たまたまさ、20年後の今年になってるだけなんだけど
その時のこと考えてて」
冗談めかして微笑みながら
「また 大物にでもなろうとしてた時の自慢?ふふ」
「ん~ その時はまだ道は広かったのかな」
立ち止まり 少し微笑みかえす
・・・
「今はとても並んで歩けるような道にはいないなあ
それもくねくねしてなおかつ非常にでこぼこしてる
行き先も大したとこじゃないような・・・」
遠くを見 近くの稲に目を落とす
空を見上げて
「だれだって同じだよ
私だって なんというか 何か劇的に
人生が変わることがあるって信じていたもの」
あきらめたような表情で
「なんか ありきたりだなあ
もうちょっと 何かないか」
気分を変えようと大きな声で話す
「じゃあ お寿司食べたい」
不意をつかれたように
「は?どっちかつうと中華だな
少し辛いやつ」
二人で笑う
「おなかすいたから 食べにいこうよ」
さっきの会話はすっかり忘れている
「だな ちゅうか?」
「すしだよ」
「いや 中華ちゅうか」
「なんだそれ?」
風は相変わらず稲を揺らす
いつの間にか日は大きく傾いて輝く
そらにはあまり雲もなく 深い青がひろがる
「アメリカの空もこんなだったな」
ふと つぶやく
「行ったことないもん」
視線を変えずに独り言に答える
「きっと今でも青いんだろうなあ
いや 今は少し汚れてるかな 黄色がかった青だな
きっと」
「何 自分で決めてんの」
あきれたように言う
「日本の秋はやっぱいいね」
「涼しいもんね」
お互い それぞれのしぐさで会話する
「まだ暑いじゃん」
「でももう十月だし」
「すぐにクリスマスがくるなあ」
「来年も頑張ろう」
「まだ 今日のことやんなくちゃいけないだろ」
「おっ やる気になったね」
「そうでもないけど
やってみるべか」
歩き出す あたりは黄金色にそまっている
笑顔はないが 信念をもち新しい気持ちで歩もうとしている
Posted by びらーだ at 16:44
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