2013年05月16日
I go
親父が逝ってからしばらくたったころ
そろそろと片付けをしていた場所がある
そこは家族の歴史が始まって間もないころ住んでいた所
そこは長い間 倉庫のようになっていた
どこかの猫が住み着いていたり 蛇が静かに入り込んで行ったり
長い間 そのままにしていた空間だ
昭和がよみがえってくる まだ子供だった自分には
まったく目に入らなかった世界
当時の親父の仕事を 見ることができた
その中でも とてもたくさんの本があった
囲碁の本
そういえば よくやってたな
全く興味のなかった自分には 当時少しも気が付かなかったんだろう
何度か囲碁のこと習ってみようとしたりもしたが
未だにルールもまともにわからない
そもそも そんな気がなかったわけだ
囲碁は宇宙
頭の中で無限に広がっていく
一生に一度も二人で打つことがなかったな
付き合ってあげるほどの気持ちもなく しかし
碁盤に向かい合う図を なんとなく想像したこともあった
できなかったよ
何とも言えないもどかしさや照れくささやめんどくささ
そんなものが渦巻いていたんだな
いまでもふと 苦さとともに思い出す
囲碁の本は あの倉庫の隅に積んだままだ
親から子へ 引き継いだものは何だったの
何もまともにできない自分は
こんなことを継承したとは思えない
そうなる代わりに 大切なものはどこかの時点で
手放してしまったような気もする
梅雨前のこの季節
田んぼに水が入りだす
日はいつまでも落ちず
いつのまにか 帰る人でにぎやかになる通り
西日のなかで外においてある椅子に腰かけ
目を細めて くゆりとタバコを吸っている
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