2012年05月02日
緑の町に舞い降りて
乗り物で遠くへ行くことは
特別な時間だった
なんといっても
クルマが唯一の手段だった
電車よりクルマの方が圧倒的に
多かった
ありがたいことにクルマは
身近な存在で
逆に鉄道で遠くへ行くことに
憧れていたこともある
クルマは
同じ移動空間を
同じ時間 過ごす
夢の乗り物だった
ましてや
一人で車に乗ることは
幼いころは
考えもつかないことでもあり
大きな冒険として
人生の夢でもあったように思う
ただ その頃でも舟や飛行機
宇宙だって すでに人類は覗いていたし
世界一の高い山や深い海も
征服という言葉で
挿絵の入った子供向けの本もでていた
すごいスピードで時代は流れる
今日の事は すでに遠い過去
急流のごとく
毎日 新しいものが生まれていた
やっぱり
今でも飛行機は特別の乗り物だ
ただ
最初に乗ったのがいつだったのか
思い出せない
あれは じつは新幹線だったのか
地下鉄だったのか
あるいは 車ごと乗りこんだフェリーなのか
混濁した記憶は
いつまでたっても澄んでこない
それどころか 透明な水のごとく
それすらも消えてしまいそうだ
きっと何回目かの搭乗
といっても数えるほどしか機会はなかった
だから 初めてか二回目か
それほど緊張していたわけではないのだが
それさえもおぼろげな 情けない記憶
いい思い出であったはずが
心の中の宝箱から なくなっている
国内線の1時間半ほどのフライトは
なんてことのない時間だった
機内をゆらゆらとタバコの煙がゆれている
ある意味 いい時代だ
どこに行ったのか
どこの空港に降りたのか
そのあと どうやって空港をでたのか
その日は晴れていた
それだけは覚えている
間違っているかもしれないが
晴れていたと考えている
せめて晴れていてくれなきゃ
記憶にない旅のストーリーは
また変わってしまう
緑の町
五月なのかもわからないままだ